図書室の姫
「五月蝿い…離せ!」
俺の腕の中で必死に離れようとする久野を、今離しちゃいけないって思ったんだ。
「…お前にわかるものか…」
久野が呟いたのを聞き逃さなかった。
「わかるんだよ!
俺にも……黒くて鉛みたいのがある…から」
ピタッ
離れようとする久野の動きが一瞬止まった。
「俺はお前を知りたい…ダメか?」
「…う…ひっく…うぅ……」
久野が泣き出した。一生懸命、声を殺して…
俺はって焦った。
だけど抱きしめていよう、そう思えたんだ。
泣いている久野はいつもより小さくて、俺がもっと力を込めると壊れてしまいそうだったから。