図書室の姫
──帰り道
「久野は、帰りどっち?」
「……」
「…久野?」
「…あぁ……そっちだよ…」
久野はさっきまでの笑顔が無くなり、急に押し黙って下を向いていた。
「…大丈夫か?」
「大丈夫だ…別にガキじゃあるまいし、一人で帰れるさ」
「そうゆうことじゃなくて…」
俺は先を歩こうとする、久野の手を握った。
「大丈夫か?」
「っ……田宮にはかなわないなぁ…」
久野はどこか悲しそうな表情を浮かべ笑った。
その笑顔はどこか…痛々しかった。
「送る…」
─ギュッ
俺は久野の手をさっきよりも強く握った。
「っ…大丈夫だ…」
「大丈夫じゃない…
今の久野はぜんぜん大丈夫なんかじゃない…放って置けない。
あいにくだけど、俺は自分の友達…特別なやつが、今にも泣きそうな顔をしてるのに、先に帰れるほど無神経なやつじゃないさ…」
そう言って俺は笑って久野の手を引いた。