図書室の姫



急に過去の忌まわしい記憶がよみがえった。




───7年前



『おかあさんただいま〜!』




俺はそのとき何も知らないただの、10歳の男の子だった。

俺は一人っ子だった。

母はいつも優しい笑顔で俺を包んでくれた。
父は厳しくもいつも俺と母を大切にしてくれた。

愛にも生活にも困らなかった家庭に生まれた俺は、すごく恵まれて育った。


近所でも評判の良い両親。そんな間に生まれた俺は、両親の喜ぶ顔が見たくて、10歳なりに頑張っていたと思う。だから、俺も近所で"いいこ"と呼ばれていた。

幸せだった…



悲しいことなんて、この世に無いと思っていた。
横見れば、大好きな両親がいつもいて…それが当たり前なことだと思っていた。

その時の10歳の俺には…







< 60 / 65 >

この作品をシェア

pagetop