図書室の姫
急に過去の忌まわしい記憶がよみがえった。
───7年前
『おかあさんただいま〜!』
俺はそのとき何も知らないただの、10歳の男の子だった。
俺は一人っ子だった。
母はいつも優しい笑顔で俺を包んでくれた。
父は厳しくもいつも俺と母を大切にしてくれた。
愛にも生活にも困らなかった家庭に生まれた俺は、すごく恵まれて育った。
近所でも評判の良い両親。そんな間に生まれた俺は、両親の喜ぶ顔が見たくて、10歳なりに頑張っていたと思う。だから、俺も近所で"いいこ"と呼ばれていた。
幸せだった…
悲しいことなんて、この世に無いと思っていた。
横見れば、大好きな両親がいつもいて…それが当たり前なことだと思っていた。
その時の10歳の俺には…