図書室の姫



『ただいま〜!』



そのとき俺は小学校から帰って来たところだった。

その日は体育の授業の競走で1番になったので、両親を驚かせようとして急いで家に帰った。



─ガチャッ!



『お母さん、ただいま!

……?』



家に帰ると、いつも母が玄関までやって来てくれるのに、その日は母が出てきてくれなかった。
不思議に思って俺は家の中に足を踏み入れた。



『…何?』



俺はその時何かおかしいと思った。

人の気配がしない…


母は専業主婦だ。だからいつも家にいるはずなのに。出かけるときは、朝、俺が学校に行くときに鍵を渡してくれていたのに…


でも鍵は開いていた。




ざわざわと、不安が込み上げてくるのを抑えられなかった…









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