甘の弱な君が好き【完】
その言葉に胸が跳ね上がる
久しぶりに聞くその名前
「……」
「橙真さんに聞いても話してくれないんすよー」
そっか芸能コースは全学年一緒にホームルームするんだもんね。
じゃあ青くんは今日も北浜さんに会ってるんだ。
「…藍先輩、橙真さんと何かありました?」
伏せた私の表情を見てか、何かを察したように届く言葉
眉を下げて、目線を合わせてくれる
「…うん。告白して振られちゃった」
「…俺ならそんな顔させないのに」
私はそんなひどい顔をしていたのか、青くんの表情がだんだんと暗くなっていく。
胸が痛い。
「散々自分の側に置いておいて、好きになられたら切り捨てるなんて」
怒りを含んだような目、トーンの下がった声
青くんらしくない。
「最初から好きにならない約束だから…当然の報いなの」
当然なんだって言い聞かせるほど、苦しいのはなぜなのか。
諦めの悪い自分が情けない。
あの日から毎日、苦しい中でもがいてる。
「やっぱり俺じゃダメですか?」
まだ暑い太陽
夏の湿気た風が私たちの間を吹き抜ける
「…ごめんね」
「だから謝らないでくださいよ」
困ったようにそう笑うから、私もなんとか笑顔を作った。
暗い顔ばかりしてちゃダメだ。
青くんを好きになれたらいいのに、なんて安直で最低な考えが脳裏をよぎった。
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