馨子ーkaorukoー


ーーーーー

ーーーーーーーーー


「馨子、おいで」

お風呂から上がりたてのわたしをおじ様が優しい声音で呼ぶ。

「はい」

ここはふたりの寝室。

おじ様の趣向で、ベッドではなく、畳部屋にふかふかのお布団がふたつ並べて敷いてある。

わたしはおじ様が待っている鏡台の前にちょこんと座る。

おじ様とわたしのルーティンのひとつ。先にお風呂から上がったおじ様が、あとから上がったわたしの髪の毛をドライヤーで丁寧に乾かすこと。

おじ様のごつごつとした手指が優しく、とても優しくわたしの髪をふわふわと乾かしてくれる。この時間がたまらなく好き。

最初はごわごわだった髪の毛が、おじ様の愛情でこんなにもつやつやになって。

今では、自分のパーツのなかで一番誇れる部分だ。

気持ち良くて目を閉じていると「ヴィン…ッ」と、ドライヤーのスイッチを切る音がしてがっかりする。

でも、直後、

「馨子、シようか」

「っ!シます!シたいっ!!」

髪を乾かして貰うより楽しみなことっ!
< 11 / 15 >

この作品をシェア

pagetop