本部長は慇懃無礼
 昨日の夜、小池は一本の電話を掛けていた。


「お電話ありがとうございます。こちらエレガンス航空の佐山と申します」


「来週の便を予約したのですが、一枚の座席をエコノミーからファーストクラスに変えたいんです」


「かしこまりました。確認しておりますので少々お待ちください」


「はい」


 
 数分待ってようやくチケットのグレードを変更手続きが完了した。


「これで山田も少しは機嫌を直してくれるといいが……」


 ブーブー。小池のスマホに一件の着信が入った。


「もしもし、小池です」


「こちら完全無潔というバーなのですが、お客様がかなり酔われていましてお電話しました。迎えにきて頂くことは可能ですか?」


「あ、いや、俺は迎えに行くような関係では無いので......」


「お客様が小池が払うから電話しろとおしゃられていまして」


 小池は迷ったが完全無潔に向かった。


 店に入ると京子を含む3人はベロベロに酔っぱらって椅子に座り込んでいた。


「皆さん、起きてください。帰りますよ」


 小池が声を掛けてもビクともしない。


「山田さん、しっかりして!」


 京子は急に起き上がった。


「山田さん、起きてくれて良かった。小池です。タクシーを呼ぶので山田さんとお二人の住所を教えて貰えますか?」


「お! 小池だ! 世界一嫌味な奴」


「はいはい。早く帰りますよ」


 小池が京子の肩を支えた瞬間、大きな嗚咽が聞こえた。





「……一緒にいた仲間はたたき起こして住所を聞きタクシーで送った。そして君はあまりにも服が汚れていたから俺の家に運んで着替えさせた。これが昨日の事件の真相だ」


「まさか、そんなはずは……。そんなことがあれば楓と林が連絡してくるはず」


「その二人は裕太が来てタクシー呼んだ事も覚えてないんじゃない?」


「たぶんな。って将生は関係ないから静かにしててくれ」


「あ、ごめんごめん」


 京子の頭の中は混乱していた。どうして最低な奴が酔っぱらった自分のことを見捨てなかったのか理解できなかった。
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