本部長は慇懃無礼
「申し訳ありません」


 京子は深く頭を下げて謝罪した。


「まぁ、昨日は酔ってたんだし気にしなくていい」


「でも私本部長のこと誤解してビンタしたので始末書書いて提出します!」


「フハハ。裕太にビンタしたのか」


 小池、将生のスーツの裾を掴み扉の外へ追い出す。


「裕太は相変わらず照れ屋だな」


 小池は扉を閉めた。


「始末書は書かなくていい。昨日のことは無かったことにしよう」


「でも……」


 小池は京子の近くに行く。


「その代わり、来週の出張では君が僕の彼女のふりをしてくれ」


 京子は突然のことに驚いて机に置いてあった花瓶に腕が当たって落としてしまった。


 パリーン。ガラスが飛び散る。


「大丈夫か?」


「す、すいません。急なことにびっくりしてしまって……。すぐに片づけます!」


 割れたガラスの破片を集めている京子の腕を小池が掴んだ。


「素手で触ったら危ないだろ! ここは俺が片づけるから、君は総務に書類を届けてきてくれ」


「わ、分かりました」


 京子は小池に腕を掴まれたことに動揺し、素早く本部長室から飛び出した。


 部屋の外には将生がいたが、存在に気が付くことなく通り過ぎて行った。


「あの人、どこかで見たような気がするな」
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