本部長は慇懃無礼
京子は本部長室に入る前に扉をノックした。


「どうぞお入りください」


男性の声がした。緊張しながらもゆっくりと扉を開けて部屋に入る。


するとそこに居たのは昨日の慇懃無礼な最低男だった。


「山田さん。二回目だね、会うのは」


京子は突然の事に驚いて頭が真っ白になった。


「あの……なんで昨日の慇懃無礼がここに……?」


「今日から君の上司として働く事になった。君は本部長の秘書として今日からこの部屋で勤務してもらう」


「そんな! あまりにも急じゃないですか!」


「会長のご意向だ。僕にもどうする事もできない」


京子の心の中には絶望的な感情が湧き上がってきた。昨日の最低な男が上司だなんて断固拒否である。


京子は裕太の部屋をそのまま飛び出して直属の上司だった課長の元に話をしに行った。


「川田課長!一体どういう事ですか? 何で私が急に異動する事になってるんですか?」


「山田さん、ごめんね。私も口止めされてて……。急に経営の問題で会社の体制を大きく変えるとか言われて、どうする事もできなかったんだ。申し訳ない」


川田は背中を丸めて、小さくなっている。とても申し訳なく思っている事が見るからに分かる。


「課長は悪くないって事ですよね。急に押しかけてすいませんでした」
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