何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
手術室
郁の命が危ないと連絡を受けた佐藤が、病院に駆けつけた。
遅れて、こころと瞬も息を切らせてやってきた。
こころは佐藤から郁が急変し緊急手術に入ると連絡をもらい、郁から聞いていた話が真実ではなかったということを知った。
「郁のバカ…あんたいつも、大事なことばっかり隠そうとする…」
手術室前のベンチで泣くこころの背中を、瞬が優しくさする。
無機質な手術室のドアは固く閉ざされ、「手術中」と書かれたランプは、かれこれ5時間も灯りがともされている。
手術室の中では、執刀医の碧が、助手を務める矢野らの医師とともに、手術を行っている。
手術台の上で、胸を開かれている郁。
心臓は止められ、人工心肺が装着された状態で手術が行われていた。
なるべく早く手術を終えないと、郁の体力が持たない。
しかし、郁がこれまで繰り返し受けてきた手術の影響で、癒着してしまった傷跡が多く、慎重に癒着を剥がさないと、不整脈や大出血を起こす恐れがある。
貧血が続く郁のような患者がこのような手術を受けることは、本来かなりの危険を伴う。
だが、消えかけていた郁の命を救うためには、これ以外に方法は無い。
難易度の高い手術に挑む碧。
しかし、これまで、碧は何度も何度もこの手術のシミュレーションをしてきた。
郁に初めて会った後、郁が何の病気で入院をしているのかを両親に聞いてから、碧の運命は決まっていた。
郁のような子を助けるために、碧は医師になり、循環器科医を志した。
郁の両親が急死してからは郁に会えない日が続いたが、医学部に入るため猛勉強をしている時も、医師になった後も、幼い日に交わした約束を忘れることなく、毎日毎日寝る時間も惜しんで勉強をした。
郁にやっと会えたんだ。
絶対に約束を守る。
郁は俺が助ける。
少しでも手元が狂えば郁の命を奪ってしまう緊張感と、張り詰めた空気の中でも、碧は冷静に、見事な手つきで手術を進めていった。
手術が始まって10時間が経過した頃、手術室のランプが消え、ドアが開いた。
遅れて、こころと瞬も息を切らせてやってきた。
こころは佐藤から郁が急変し緊急手術に入ると連絡をもらい、郁から聞いていた話が真実ではなかったということを知った。
「郁のバカ…あんたいつも、大事なことばっかり隠そうとする…」
手術室前のベンチで泣くこころの背中を、瞬が優しくさする。
無機質な手術室のドアは固く閉ざされ、「手術中」と書かれたランプは、かれこれ5時間も灯りがともされている。
手術室の中では、執刀医の碧が、助手を務める矢野らの医師とともに、手術を行っている。
手術台の上で、胸を開かれている郁。
心臓は止められ、人工心肺が装着された状態で手術が行われていた。
なるべく早く手術を終えないと、郁の体力が持たない。
しかし、郁がこれまで繰り返し受けてきた手術の影響で、癒着してしまった傷跡が多く、慎重に癒着を剥がさないと、不整脈や大出血を起こす恐れがある。
貧血が続く郁のような患者がこのような手術を受けることは、本来かなりの危険を伴う。
だが、消えかけていた郁の命を救うためには、これ以外に方法は無い。
難易度の高い手術に挑む碧。
しかし、これまで、碧は何度も何度もこの手術のシミュレーションをしてきた。
郁に初めて会った後、郁が何の病気で入院をしているのかを両親に聞いてから、碧の運命は決まっていた。
郁のような子を助けるために、碧は医師になり、循環器科医を志した。
郁の両親が急死してからは郁に会えない日が続いたが、医学部に入るため猛勉強をしている時も、医師になった後も、幼い日に交わした約束を忘れることなく、毎日毎日寝る時間も惜しんで勉強をした。
郁にやっと会えたんだ。
絶対に約束を守る。
郁は俺が助ける。
少しでも手元が狂えば郁の命を奪ってしまう緊張感と、張り詰めた空気の中でも、碧は冷静に、見事な手つきで手術を進めていった。
手術が始まって10時間が経過した頃、手術室のランプが消え、ドアが開いた。