何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
「郁ー!!」

高校卒業後、看護学校に入り、看護師と助産師を目指しているこころが走ってきた。

退院する郁を、付き合い始めた瞬の車で迎えに来てくれたのだ。

「こころ!来てくれて本当にありがとう!」

「郁、遅くなってごめんね!じゃあ家まで送るね!…あれ、竹内先生は?」

「それが、緊急手術が入ったらしくって、見送りには来れないんだって」

「そうなんだ。さすが、将来有望な天才ドクター様は違うねぇ…あれ、そんなドクターと一緒に住んでるのは誰だっけー」

「…もう…!こころ、やめてよ〜」

茶化すこころの言葉に、照れる郁だった。

病院のスタッフへの挨拶を終え、瞬の車に乗り込む郁。

「瞬、忙しいのに、来てくれて本当にありがとう。よろしくね。」

「全然大丈夫。この病院の隣の棟が医学部だから、道慣れてるし。」

瞬は葉山大学の医学部の2年生で、碧の後輩となっていた。

「じゃあ、出発するよー」

出発しようとした瞬間、遠くから駆け寄ってくる人物がいる。

「郁ー!」

窓を開け、外を見る郁。碧だ。

ボサボサだった髪は、今や綺麗に整えられ、白衣もシワだらけではなくきちんとアイロンがかけられている。

「…碧!?」

全速力で走ってきた碧は、息が上がっている。

「良かった。間に合わないかと思った」

「どうしたの、そんなに急いで」

「はい、これ」

大きな花束と、小さな箱を手渡す碧。

小さな箱の中には、上品な小粒ダイヤのネックレスが入っていた。

「退院祝い。じゃあ郁、また後でな。」

「碧、ありがとう…。」

少し涙ぐみながら、郁が話す。

そして、背筋を伸ばし、言葉を続ける。

「竹内先生、入院中はお世話になりました。手術を成功させてくれて、ずっとそばにいてくれて、本当にありがとうございます。…じゃあまた後でね。」

郁は碧に手を振る。

「こころちゃん、瞬くん、今日はどうしても俺が郁を送れなくてごめん。急だったのに迎えに来てくれてどうもありがとう。郁をよろしくね」

「親友ですから!看護師と医者の卵に任せてください、先生!」

「頼もしいな。本当にありがとう」

手を振り、再び駆け出して戻っていく碧。



車が出発した瞬間、こころが手で顔を覆い、ポロポロと涙をこぼし始めた。

「どうしたの、こころ!」

「……だって、郁の移植手術が成功して嬉しいのと、先生と郁が幸せそうで…」

「こころ…心配かけてごめんね…いつも本当に本当にありがとう…」


お互い泣きながら、抱き合う郁とこころだった。
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