何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
過去に心臓移植を受けた経緯から、郁はひとまず循環器科に入院し、碧やその他の医師らから様々な検査を受けた。


心臓エコーの結果も、貧血や炎症などの数値も問題なかった。


胃腸にも問題は見当たらない。


その間も嘔吐を繰り返す郁。


悪化していることを不思議に思った碧は、追加検査を決めた。


車椅子で別の科に移り、電動の診察椅子に乗せられ、検査を受ける郁。


「これは…」


碧が息を飲む。


「おめでとうございます。今7週目に入ったところですね。」


「え…」


碧の同期で産科医をしている真田 律からエコーで胎児の姿を見せてもらい、驚きと嬉しさで、涙が溢れてくる郁。


「吐き気はつわりの影響でしょう。体重がかなり減っているようですし、尿からケトン体が出ていることからも、以前から食欲が落ちていたと思います。」


「すみません、生理が来てないことに気がつきませんでした…それに、まさかつわりだったなんて…」


かねてより太れない体質で、月経不順もある郁は、まさか自分が妊娠しているとは考えてもいなかった。


「…前から食欲が落ちていたのか。気がつかなくてごめん」


このところ激務だったとはいえ、郁の変化に気がつかなかったこと、相談してもらえなかったことに不甲斐なさを感じ、声が沈む碧。


真田からの説明が続く。


「このケトン体の数値からして、重症妊娠悪阻と言えます。元々がかなり低体重ですし…せめてきちんと食事がとれるようになるまで、産科で入院しましょう。」


「…わかりました」


しばらく離れていた入院生活にまたもや戻ってしまうこと、仕事を休まないといけないことに落ち込む郁だったが、お腹の子のために、頑張ろうと決意する郁だった。


「律、申し訳ないが、頼んだ」


「碧の大切な大切な奥様をお預かりしますね」


イタズラっぽい笑みを浮かべる真田だった。



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