何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
その4ヶ月後、郁は妊娠8ヶ月を迎えていた。



郁に早く仕事を辞めて欲しがっていた碧だが、郁の熱意に負け、郁は結局産休に入るまで仕事を続けていた。

いまのところ、運良く母体に問題は起こっておらず、妊娠経過は良好で、胎児も順調に育っていた。


胎児は平均よりも大きいと言われるほど。

嬉しい反面、郁の小さな体では大きめの胎児を自然分娩で産むことは困難と告げられ、帝王切開で出産する予定になった。


一方で、郁が心配していた胎児の心臓エコー検査についても問題は無く、郁はその結果を聞いて嬉しくて一晩中泣いていた。



─あと少しでお腹の赤ちゃんに会える。

赤ちゃんに会えるなら、お腹を切るのなんて全然こわくない。


「早く会いたいね。」


帝王切開を受ける郁の体を心配する碧とは対照的に、郁は毎日前向きに過ごしていた。


入院予定の2週間前、風邪をひいたのだろうか、郁に咳が出始めた。
< 60 / 80 >

この作品をシェア

pagetop