何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
救急車が到着し、搬送される郁。

郁はなんとか自力で呼吸しているが、呼吸の度に肩が上がり、ゼーゼーという音が聞こえる。

「葉山大学付属病院まで搬送して下さい。心臓移植の手術歴があり、免疫抑制剤を服用中の患者です。今朝から発咳していましたが、急激に悪化したようです。現在妊娠9ヶ月です!」

車内で酸素飽和度を測ると、9割を切っており、郁の体に酸素が行き渡っていないことを示していた。

すぐに酸素を吸入させられる郁。
意識はほぼないはずなのに、お腹に手をやる動作が見られる。

顔面が蒼白で、今にも意識が飛びそうな郁に大声で声をかける。

「郁!郁!…苦しいよな。すぐ病院に着くからな。頑張れ!」

碧は、郁のお腹をめくり、聴診器で胎児の心音を探す。

「…胎児の心音は、問題無さそうだな…」

元気な心音が聞こえ、少しだけ安心する碧だった。

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