何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
「郁ー!今から元気な赤ちゃん産もうねー!お母さん、頑張ってー!」

郁が心肺停止状態になり、帝王切開を行うと聞いたこころが、手術用のガウンを着て、産科から大急ぎで駆けつけてくる。

痩せた体に不釣り合いの、はち切れんばかりの腹部に、律が迷いなくメスを入れる。

その間も、郁の蘇生のため、また、体内の胎児に血液を送るため、心臓マッサージは休むことなく交代で続けられる。

律が子宮を切り、大きく膨らんだ子宮内に手を入れ、胎児を取り出し、すぐに小児科医に渡す。

小児科医が吸引を行い、何度か背中をさすった瞬間、赤ちゃんが大きな産声をあげた。


部屋の外で、碧がその声を聞く。

「…生まれた…元気に…泣いてる……」

込み上げる涙に、顔を抑える碧。

こころが赤ちゃんを抱いて、碧の元に走ってきた。
こころの目も真っ赤だ。

「竹内せん…お父さん!おめでとうございます、元気な女の子ですよ!少し小さめですが、元気に泣いてくれました!」

「…ひなた…!」

碧がひなたを抱く。
碧は、嗚咽でそれ以上何も喋ることができなかった。

ひなたは少し未熟児だったため、保育器に入れられて検査のために運ばれていった。

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