何度生まれ変わっても ─心臓病の幼馴染と過ごした日々─
5分後、戻ってきたこころの腕には、おくるみに包まれたひなたが抱かれていた。

こころは郁のベッドに近づくと、郁の手を取り、ひなたの手を近づける。

ひなたは、小さな手で、きゅっと郁の手を握る。

「ひなたちゃん、お母さんのおててだよ。お母さんは、とっても頑張り屋さんだよ。命懸けであなたを産んでくれたんだよ」

「お父さんがいま、お母さんを起こそうとして、お母さんの心臓を頑張って動かしてくれてるよ。お母さんも、頑張ってるんだけど、起きたいと思ってるんだけど…」

こころの目からは、とめどなく涙が溢れ、それ以上喋れなくなる。



郁にしてしてあげられる最後のこと。

碧は、ゆっくりと、郁の胸を押す動作をゆるめ、手で顔を覆う。

そして、心臓マッサージを完全に中止した碧は、名残惜しそうにベッドから降りた。
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