夜華の先に
ダダダと勢いよく階段を駆け下り玄関の鍵を開け、靴も履かずそこから逃げ出した。


硬いコンクリートの凸凹に足が当たり、足がジンジンと痛い。


うしろはふりむかない。


いつ追いつかれるかわからないから。


暗い暗い闇の中を、月の明かりだけを頼りに、一生懸命走った。


途中から足の痛みなんて感じなかった。


はぁ。はぁ、


ここは…今になって後ろから追いかけてくる音がしなくなったのに気がついた。


目の前には古い倉庫みたいな建物が建っていた。

うっ…

わたしは思わず鼻を手で覆ってしゃがみ込んだ。


ツーンとくる、さっき嗅いだ匂いが漂ってきた。


あの、血の匂い。


ハァッ…ハァ…ハァッ…ハァ…ハァ…


私はそのまま意識を手放した。



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