夜華の先に
こんな朝早い時間にこの辺を歩いてる人は少なく、私のローファーの音だけが響いている。


家から学校は電車と歩きで1時間ぐらい。


だから、こんな早く出る必要はないけど、私にはいくところがあるから。

この道を通る時はあの時のことを思い出すことがある。

あの必死に走ったあの道を


目の前には古い倉庫。





ギーと鈍い音と共にドアが開く。


「楓華！！」

この声…。

私の視界は一瞬にして真っ暗になり腰には誰かの手があるのがわかる。

抱きつかれたんだと思うのにはそう時間は掛からなかった。

私も腕を回してギュッとした。


「お二人さーんイチャイチャしてるところ悪いんだけど、透（とおる）は、やらなきゃいけないことがあるから、」

「やだ。サラがやれ」

私は顔を上げて背の高い2人を見た。

「透。やりなよ。一緒に手伝うから。」

私は透の腰から手を離して言った。


「久しぶりに楓華と会えたのに…」

なんて、ぶーぶー言ってる。

「サラくんいつもごめんね」

私がそう謝るとやることに取りかかろうとしていた透がすごい勢いで私の元に来て「謝る必要ない」と、また私にくっついた。
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