ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
鬼蔵元にひと目惚れした日
私の旦那様は〝鬼だ〟と、周囲の人間は声をそろえる。
全国にその名を轟かせる大手酒造メーカー『御鏡酒造』の社長である彼。一緒に仕事をしている人たちからすると、彼のシビアさがよくわかるのだろう。
当然ながら、彼は質のいい商品を作るために妥協を許さない。質だけでなくラベルや価格設定、イベントの企画に関する内容まで即了承してもらえることがまずないので、皆〝絶対一回でOKをもらおう!〟と競い合っているという。
しかし、決してなんでもかんでもダメだと跳ねのけるわけではなく、皆を納得させるだけのちゃんとした理由があり、それを教示してくれる。そうして作り上げた商品は必ずヒットするので、社員たちはしっかりついてくるのだ。
そして彼は、家庭でも鬼のように厳しいのではないかと思われているらしい。
御鏡酒造の本社で臨時の仕事をさせてもらっている私が、彼について歩くだけで好奇の視線を向けられる。まだ結婚して日が浅いので、ツーショットが物珍しいのだろうと気にしないようにしているが、内心はやはりいたたまれない。