ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「え、わ……っ!?」

 ぐっと手首を引かれてバランスを崩した私は、そのまま彼の膝の上に座らされる。

「ここにいて」

 いつもより数倍甘い声で囁かれると同時に、ぎゅっと抱きしめられた。ふたりきりという状況も相まって、心拍数が急上昇する。

「可愛い、依都……ずっとこうしたかった。一秒も離したくない」
「え? えっ!?」
「琥珀糖を食べ終わったって、俺はいつまでも君のそばにいるよ」

 御鏡さんにしては甘すぎる言葉がぽんぽんと飛び出し、顔も身体も熱くてちょっとわけがわからなくなってくる。威圧感たっぷりのいつもの彼とは別人みたい。

「み、御鏡さん、なんかキャラが……」
「名前」

 彼は端的に言い、私を抱きしめたまま顔を上げる。

「名前、呼んで。依都」

 ねだる彼にもキュンとするけれど、頬をやや上気させ、瞳の奥に獣の色を潜めている顔は男の色気に溢れている。

 そういえば名前を呼んだことはなかったなと、緊張で強張る口をゆっくり動かす。

「……史悠さん」

 初めて口にすると、彼がとびきり甘く微笑んだ。

 見惚れそうになったのもつかの間、首の後ろを支えられ、彼の唇が近づいてくる。柔らかなそれが私の唇に触れ、幸せに包まれて瞼を閉じた。

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