ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
おあずけされた日
いつもに増して重い瞼を押し上げると、絵に描いたような美しい顔が目の前にある。
今、とても幸せな夢を見ていたのだ。恋人になった依都にキスをして、たっぷり甘やかす夢。りんごのように真っ赤になって、官能的な声を漏らす彼女もとても可愛かった。
まだその世界にいるのか……と、彼女の頬に手を伸ばし、触れた瞬間にはっとした。
いや、あれは夢じゃない。砂糖菓子に蜂蜜をぶっかけたような言葉を口にしたのも、彼女の身体を弄り回したのも、断片的にだが覚えている。なにをしているんだ俺は……。
蔵元でありながら酒に弱いだなんて体裁が悪い気がして、会社で酒の試飲をする時もバレないように注意していた。にもかかわらず、一番カッコつけたい依都の前でさらしてしまうとは。
自分の体質をつくづく恨み、仰向けになって手の甲で目を覆った。
「ん……。あ、史悠さん……?」
ほぼ同時に依都が目を覚まし、俺の様子を見て心配になったらしくがばっと上体を起こす。
「大丈夫ですか? 頭が痛いとか」
「いや、だいぶ酔いも冷めたし大丈夫。ただ、醜態をさらしてしまったなと」
「醜態?」
「こっぱずかしいセリフばかりべらべらと口にしていた気がする」