ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
依都はトイレを借りると言って中へ向かい、俺たちは玄関先で話をする。
新種の酒米を作ってもらう代わりに、依都と母親の仲を取り持つという交換条件。それは破棄しようと、ずっと言いたかったのだ。
「花菱さん、あの約束のことですが……」
「あー、あれはもういいんだ。前に依都と電話した時、『私に黙って勝手なことしないで』って怒られちまったからさ」
頭を掻いて苦笑いする彼に、俺は罪悪感を抱いて謝る。
「すみません、私のせいです。彼女の気持ちも考えずに提案してしまったので」
「社長さんは俺たちのためだと思ってくれてたんだろ? 誰も、なにも悪くない。ただ、人の心を想像するのが難しかったってだけだ」
達観している花菱さんは、廊下のほうに目をやって穏やかに微笑む。
「依都があんなに幸せそうな顔をしてるのは初めて見た。それは間違いなくあんたのおかげだし、俺はそれで十分だよ」
「……その笑顔を絶やさないように尽くします」
自分自身にも誓うように言うと、彼は安堵した様子で俺の肩にぽんと手を置く。
新種の酒米を作ってもらう代わりに、依都と母親の仲を取り持つという交換条件。それは破棄しようと、ずっと言いたかったのだ。
「花菱さん、あの約束のことですが……」
「あー、あれはもういいんだ。前に依都と電話した時、『私に黙って勝手なことしないで』って怒られちまったからさ」
頭を掻いて苦笑いする彼に、俺は罪悪感を抱いて謝る。
「すみません、私のせいです。彼女の気持ちも考えずに提案してしまったので」
「社長さんは俺たちのためだと思ってくれてたんだろ? 誰も、なにも悪くない。ただ、人の心を想像するのが難しかったってだけだ」
達観している花菱さんは、廊下のほうに目をやって穏やかに微笑む。
「依都があんなに幸せそうな顔をしてるのは初めて見た。それは間違いなくあんたのおかげだし、俺はそれで十分だよ」
「……その笑顔を絶やさないように尽くします」
自分自身にも誓うように言うと、彼は安堵した様子で俺の肩にぽんと手を置く。