ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「頼んだぞ。酒米もちゃんと作るつもりだから、安心しな」

 彼の厚意に感謝して頭を下げた。しかし、俺はこれで十分だとは思っていない。

 依都と母親を完全に和解させるのは無理かもしれないが、ふたりの心が軽くなるように手助けしたい思いはまだある。彼女たちの気持ちを聞いた上で、交換条件などではなく俺のただのお節介で動こう。

 夫として、依都がもっと幸せになれるように努める。それが俺の人生の目標だ。


 三人で車に乗り込み、市街地にある料亭に向かった。大きな池のある日本庭園を囲うように完全個室が配置されている、高級感のある店だ。

 俺の家族と合流し、店の門構えをくぐる前に依都を紹介する。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。依都と申します」

 品のいい所作で頭を下げる依都に、着物姿の母と、セットアップのパンツスタイルの叶芽が興味津々な様子で挨拶する。

「依都さん、はじめまして。会えて嬉しいわ」
「ねー! お兄ちゃん、今まで彼女なんて全然紹介してくれなかったから。あっ私、妹の叶芽です〜」

 テンション高く握手を迫る妹に、依都も嬉しそうに「はじめまして。よろしくお願いします」と返して手を取った。

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