ドＳな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい～子づくりは溺愛のあとで～

　花菱さんと挨拶していた父は、彼と依都を交互に見て真剣な面持ちで言う。

「花菱さん、今日は盃を交わしましょうや」
「ああ、やりましょう」

　花菱さんは父がどんな人間かを知っているので普通にしているが、依都は極道の映画にでも出てきそうな言葉に「えっ……？」とギョッとする。

　今日も相変わらずな父に頭を抱えたくなりつつ、俺が通訳する。

「一緒に酒を飲みたいと言ってるだけだ」
「あ、なるほど！　史悠さんが時々口調が荒っぽくなるのは、お義父様の影響を受けたんですね」
「納得しないでくれ……」

　うなだれる俺に、依都はクスクスと笑っていた。

　庭が望める座敷に案内され食事を始めると、皆すぐに打ち解けていてほっとする。運転手の叶芽は、酒を飲んでいないにもかかわらず酔っ払いみたいに依都に絡んでいるが。

「依都さん、お兄ちゃんと結婚してくれてありがとう！　優しいし美人だし一緒に日本酒も飲めるし、私も嬉しい」
「こちらこそ、快く迎えてくださって本当にありがとうございます。決して史悠さんに相応しいとは言えない私を……」

　肩をすくめてはにかむ依都に、父が優しく諭すように声をかける。