ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「花菱さんも、ひ孫に会えたら嬉しいでしょう」
父が花菱さんに話を振った。依都の隣に座っている彼は、ほろ酔い状態で緩んだ表情をさらにほころばせる。
「そりゃあもう、万々歳ですよ。この子は苦労してきましたから、幸せな家庭を作ってもらいたいですわ」
花菱さんにしてみたら、依都には自分の娘のようにならず子供と幸せに暮らしてほしいと願っているだろう。彼女もその気持ちはわかるらしく、複雑な表情をしていた。
その後も跡取りの話が続きそうだったので、見かねた俺はそっけなく言い放つ。
「跡取りの話はもういいだろ。どうするかは俺たちが決める」
「はいはい。わかったわ」
母は嫌みな感じではなく〝仕方ないわね〟といった調子で小さく笑い、依都に顔を向ける。
「気を悪くさせてたらごめんなさいね。私たちが元気なうちに見られたらなって思っているだけで、急かしてるわけじゃないのよ」
「いえ! 逆に気を遣わせてしまってすみません」
恐縮した依都は、落ち着いた笑みを湛えて「いつか、期待に応えたいです」と続けた。
その〝いつか〟はまだ先でいい。夫婦ふたりだけの時間を楽しんでいたい俺は、そんな風に呑気に考えていた。
父が花菱さんに話を振った。依都の隣に座っている彼は、ほろ酔い状態で緩んだ表情をさらにほころばせる。
「そりゃあもう、万々歳ですよ。この子は苦労してきましたから、幸せな家庭を作ってもらいたいですわ」
花菱さんにしてみたら、依都には自分の娘のようにならず子供と幸せに暮らしてほしいと願っているだろう。彼女もその気持ちはわかるらしく、複雑な表情をしていた。
その後も跡取りの話が続きそうだったので、見かねた俺はそっけなく言い放つ。
「跡取りの話はもういいだろ。どうするかは俺たちが決める」
「はいはい。わかったわ」
母は嫌みな感じではなく〝仕方ないわね〟といった調子で小さく笑い、依都に顔を向ける。
「気を悪くさせてたらごめんなさいね。私たちが元気なうちに見られたらなって思っているだけで、急かしてるわけじゃないのよ」
「いえ! 逆に気を遣わせてしまってすみません」
恐縮した依都は、落ち着いた笑みを湛えて「いつか、期待に応えたいです」と続けた。
その〝いつか〟はまだ先でいい。夫婦ふたりだけの時間を楽しんでいたい俺は、そんな風に呑気に考えていた。