ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「いーと。なに笑ってんの」
「ふふ、なんでもない」

 普段と違うしゃべり方の史悠さんこそ可愛くて、つい顔が緩んでしまう。が、油断していると彼はふいに獣の一面を出してくる。

「俺の愛はこんなもんじゃない。いつまで余裕でいられるだろうな」

 上半身裸の彼は、スラックスのファスナーを下げて挑発的な笑みを浮かべた。その姿がセクシーでドキドキが加速する。

 案の定、それからすぐに私の余裕はなくなって。甘く攻め立てられ、理性がとろとろに崩れ、抗えない絶頂感に何度も襲われる羽目になった。


 翌朝も、チェックアウトの時間までベッドの中で怠惰的に過ごす。

 史悠さんの実家に泊まるのはまだハードルが高いので遠慮したが、やっぱり宿にして正解だった。彼の家は離れがあるとはいえ、家族が近くにいる状況ではこんな風に我慢していられないもの。

 史悠さんはすっかりいつものクールさに戻っているけれど、愛し合う時はとても情熱的だ。目が覚めて一度それを堪能してから、部屋についている露天温泉にふたりで入って極楽気分を味わっている。

 朝のきりりとした空気から逃れて湯船に浸かり、後ろにいる史悠さんに背中を預けて真面目な話をする。

「昨日、お祖父ちゃんからお母さんの病状を聞きました。先週、無事手術は終わって、これからホルモン療法が始まるらしいんです。副作用の影響がどのくらい出るかわからないけど、たぶんつらくなるだろうって」

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