ドＳな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい～子づくりは溺愛のあとで～

「唎酒師は主に販売店や飲食店で活躍しているが、生産の段階で意見をもらうのも重要だと思っている。今日のように試飲会に参加してもらって酒の特徴を聞き、販売に役立てたい」

　クールな表情で語る史悠さんの話もしっかり聞いていて、彼を信頼しているのが見て取れる。社長としての姿を直に見られて、私も嬉しくなった。

　さっそく試飲が始まるが、私はテイスティングをするのが仕事なので、口に含んだら飲まずに紙コップに吐き出す。資格を取った時以来、本格的な唎き酒はほとんどしていなかったから、普通に飲みたい気持ちを堪えるのがつらい。

　まずは最初に感じた味わい、次に中間、最後はどんな余韻が残ったかをノートにメモしていく。口当たりや外観も具体的に記すのだが、やっぱり難しいのは香りだ。

「若いメロンと……ハーブのような爽やかな香りがします。甘みも中程度以上あるので、薫酒(くんしゅ)のタイプに入りますね。十五度前後くらいが、華やかな香りを消さずに一番美味しくいただけると思います」

　アルコールを添加している大吟醸酒の中では、しっかりお米の甘みを感じて美味しい。テイスティングが終わったら飲んじゃおうかな、とこっそり目論む私のそばで、社員たちも香りを確かめて頷いている。