ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「メロンとハーブ、言われてみれば確かに!」
「〝若い〟メロンっていうのがポイントなんですね~」
「じゃあ、これは?」

 もうひとつ別の、若干黄色味がかった日本酒が少量入ったグラスを手渡されたので、一度水で口の中をリセットしてから含んでみる。

 こちらはまったく違い、バターやチーズのような深い香りがして、口当たりもまったりとしている。コクのある醇酒(じゅんしゅ)のタイプだと言うと、周りから「おぉ~」と声があがった。

「唎酒師さんってすごいですね。僕たちも味の違いはわかるけど、それを具体的に言葉で表現できないから」
「ほんとそれ! 商品の紹介文を考えるのが結構苦労するんで、めっちゃ助かります」

 同い年くらいの男性社員が必死にメモしながら言うので、私は嬉しくなって「お役に立ててよかったです」と微笑んだ。

 ひと通り特徴を伝えたところで、一番気に入ったお酒のグラスに鼻を近づけて香りを楽しんでいると、三人の女性社員が声を潜めて話しかけてくる。

「依都さん、あの……大丈夫ですか? 社長との結婚生活」
「えっ?」

 仕事とはまったく別のことを問いかけられて、声が裏返ってしまった。

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