ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 さっき、史悠さんは波多野さんに呼ばれてここを出て行ったから、その隙に話しかけにきたようだ。

「社長って家でも厳しいんじゃないですか? 会社ではいいんですけど、奥さんは大変そうだよねって皆心配してるんです」
「もし政略結婚とかだったら、無理してるんじゃないかなって。そのー……子どもも作る気ないみたいだし」
「んなっ……!」

 子どものこと、なんで知ってるの!?と驚く私に、おばさま社員が慌てて「ごめんね、セクハラじゃないのよ! 社長がポロッとこぼしてたから気になっちゃって」と補足した。

 史悠さんがそんなことを漏らすなんて意外だけれど、とりあえず〝今は〟作る気がないというだけなのに誤解しているらしいので訂正したい。なんだか夫婦仲が悪いと思われていそうだし。

「いや、あの、それは──」

 言葉を選んでいた時、ドアが開いて皆の視線がそちらに集中する。史悠さんが戻ってきた?と私も振り向くと、現れたのはハーフ系の顔立ちの美女だった。

 額を出したアッシュカラーの長い髪が大人っぽく、ロングコートに細身のジーンズ、レオパード柄のショートブーツを合わせたファッションがおしゃれ上級者という感じ。

 独特なオーラを放つ彼女が現れた瞬間、皆がざわついた。

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