ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 どこかで見たことがあるような……と思っていると、彼女はにこりと微笑んで会釈する。

「皆さんこんにちは~。風柳千笑です」

 名前を聞いて、私もはっとした。

 そうだ、この人は若くして外国でも人気があるイラストレーターじゃない! 時々メディアでも取り上げられている有名人だ。そういえば、今度コラボ商品を作るって史悠さんが言っていたっけ。

 製造部の部長さんも、驚きと困惑が交ざった様子で声をあげる。

「風柳さん!? 今日は打ち合わせではないはずでは……」
「たまたま近くに来て、時間あったから寄らせてもらったの。史悠もどうぞって言ってくれたし」

 はい? 〝史悠〟?

 聞き捨てならなくて思いっきり反応する私。彼女の後から入ってきた史悠さんは、わずかに笑みを浮かべて言う。

「ちょうど試飲をしていたところなので。よろしければ千笑さんもぜひ」

 え、え? 史悠さんまで名前呼びなの!? ビジネスパートナーでそれって普通……?

 悶々とする私をよそに、風柳さんは試すような調子で言う。

「飲ませてもらえるなんて嬉しいんだけど、私は日本酒が苦手なの。私でも楽しめるものがあるかしら」

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