ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 違う、信じていないわけじゃない。ただ、彼女があなたと会うのが嫌なだけなの。

 そう反論したかったものの、史悠さんはひとつ息を吐き出して「……悪い。俺も人のことは言えないな」と呟いた。

 どういう意味なのかと思案する前に、彼の鈍く光る瞳がこちらに向けられる。

「昨日の夜、ふたりでいたんだろう。凛太朗くんと」

 私は驚きで目を見開いた。出張に行っていた彼が、なぜそれを知っているのだろう。

「どうして……」
「君たちがバイクに乗ろうとしているところを、波多野が偶然通りかかって見たらしい。写真も送ってもらった」

 まさか、あの時近くに波多野さんがいたとは。この感じ、もしかしなくても誤解しているよね……。そういえば、子ども食堂に行くとは伝えても、凛くんがいるとは言わなかったし。

 従兄だからいいやと気を抜いていたけれど、彼にとっては他人の男だ。黙って会っていたらいい気はしないだろう。

 今さらながらそう気づいて罪悪感に襲われた時、マンションの駐車場に着いて車が停まった。直後、彼の手が私の顎に伸びてきて、強引に彼のほうを向かせられる。

「ふたりきりでなにをしていた? よそ見するなと言ったはずだが」

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