ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 焦燥と不安でいっぱいになっているであろう風柳さんは、怯えたように声を震わせる。

「どうしよう、ひとりでいる時にそんなことになったら──」
「落ち着いて」

 俺は彼女の背中にそっと手を当て、励ましの言葉をかけることしかできない。

「子どもの足なら、そんなに遠くには行けない。ホテルの外へ出ることはないだろうし、あらゆる場所にスタッフもいるからきっと大丈夫です。今は待ちましょう」

 不安要素を少しずつ取り除くように言うと、彼女は軽く深呼吸をして「そうね」頷いた。

 俺の代わりに、捜索要員として波多野を向かわせるか。そう思いポケットに手を入れると同時に、ふと昼間の一瞬元気がなくなった楽くんの様子を思い出した。

 もしかしたら、単に迷子になったのではないのかもしれない……と、漠然とした考えがよぎる。

 なんにせよ、早くまた無邪気な笑顔をママに見せてあげてほしい。そう願いながら、通話ボタンを押してスマホを耳に当てた。


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