ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
避妊をやめた日
何百人もの参加者の中から、なにかのセンサーでもついているかのごとく彼は私を見つけ、その瞳を一心に向けてきた。そして、何度も重ね合った唇が、ベッドの上とはまた違うしなやかな声色で愛を紡ぐ。
「つまり、私は生涯妻しか愛せないということです」
こんなに大勢の人がいるのに、私だけへの想いを語ってくれた。彼が『逃げるなよ』、『俺だけを見てろ』と言ったのは、この姿を私に見せるためだったのだ。
涙が出そうなほど感激すると同時に、必要のない不安を抱いていたことを早く謝りたくなる。会が終わったらごめんねと言って、それ以上に感謝と、私も愛してるとたくさん伝えよう。
涙はこぼれる寸前で我慢できた。しかし、鼻水も出てきてあまり人に見られたくない顔になってしまったので、乾杯してすぐに一旦お手洗いに逃げ込むことにする。
会場から化粧室はやや離れたところにあり、広いホテルなので迷子にならないよう気をつけて向かった。
鼻をかみ、軽くメイクを直して化粧室を出ると、近くにエレベーターホールがある。その前を通ろうとした時、ちょうど扉が開いたのでなにげなくそちらに目をやった。
その瞬間、二度見してしまった。大人たちに紛れて挙動不審になっている、ひとりの男の子が乗っていたから。