ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
契りを交わす記念日
穏やかに晴れた十月の初旬、私は刺繍の光沢が美しい白無垢に身を包み、厳かな拝殿に着座している。隣に座るのは、紋付羽織袴姿も凛々しくてとても素敵な旦那様。
今日、大切な人たちに見守られる中、私たちは夫婦の契りを交わす。今は三献の儀が行われている最中だ。
真っ赤な盃に注がれた神酒を、まずは史悠さんが三回に分けて口にする。今度は私が同じことを繰り返す。
この三々九度の儀式は、固い絆を結び一生苦楽を共にするという誓いを意味しているのだそう。
ひとつの器で夫婦が交互に飲む行為は、奥ゆかしい誓いのキスのようだ。綿帽子で隠れた隣の彼に想いを馳せ、紅をひいた唇で弧を描いた。
式が終わりに近づくと親族盃の儀があり、両家の親族一同も盃に注いだ神酒を飲む。
この神酒も、もちろん御鏡酒造の大吟醸酒だ。華やかな香りと重厚な味を楽しめる最高峰のお酒は、今日という晴れの日にぴったり。
神酒を飲み干す一同には、史悠さんの家族と私の祖父、そして母の姿がある。
黒の留袖姿の母は、前より少し頬がふっくらしてきて顔色もよく、年齢のわりに綺麗。祖父と一緒に私を見守るその瞳は、終始潤んでいるように見えた。