ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「私も、最初は組の人かと思いました」

 正直に話し始めると、波多野さんがぶはっと噴き出した。次いで「でも」と続ける私を、ぴくりと反応した御鏡さんが横目で見てくる。

「話してみたら一本芯が通っている人っていう感じで、情熱を持っているのが伝わってきて、仕事に対する信念も尊敬します。さりげない気遣いもしてくれますし、チンピラみたいな酔っ払いから助けてくれたのもすごくカッコよくて……!」

 たった数時間でもたくさんわかった彼のいいところを、酔っているせいもあって熱く饒舌に語っていると、隣の彼が片手で口元を覆って俯き気味になっているのに気づいた。

「あれ、御鏡さん? 大丈夫ですか?」

 具合が悪いのだろうかとそっと肩に触れると、彼は瞳だけを動かして私を一瞥する。

「……それ以上はやめてくれ」

 ボソッと言った彼の顔がさっきより赤くなっていて、胸がぎゅうっと締めつけられた。

 御鏡さんが照れている!? なんて貴重な顔! というか、私も恥ずかしいことをべらべらとしゃべってしまったよね……。

 今さらながら顔が熱くなり、私もしおしおと俯く。運転席から冷やかすように「よかったですねぇ、社長」と聞こえてきて、波多野さんがにんまりとしているのが想像できた。

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