ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
和服美人の虜になった日
「……最初で最後にしたくない、です」
彼女に熱っぽい瞳でそう言われた時、胸の奥でなにかが疼いた。
いや、この時だけじゃなく、今日彼女に会ってからずっと慣れない高揚感を抱いていた。自分の中で長いこと機能していなかった感情が、突然目覚めたかのように。
今夜を最後にするつもりは毛頭ない。俺の意思がどうであろうと、彼女とはこれからも関わっていくことになるはずだから。
「また会いに行く」
車を降りた依都さんにウインドウを下げてそう言うと、彼女は嬉しそうに微笑んで「待ってます」と返した。
素直に可愛いと思う笑顔に、心がくすぐられる。もしもふたりきりだったら、衝動的に抱きしめていたかもしれない。
そんな俺の煩悩を断ち切るかのごとく、ウインドウがゆっくり上がっていく。
「なにを見せられているんですかねぇ、俺は」
さらに呆れ気味の波多野の声が聞こえてきて、現実に引き戻された。ミラーを見やると、丸っこい彼の目が若干据わっている。