ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「プレゼントのことか? 誕生日だと知ってしまったのになにもしないのは、なんとなくいたたまれない」
「それもわからなくないですけど……あの子に会うのは仕事のためなんでしょう。あまり気を持たせるようなことはしないほうがいいんじゃないですか?」

 たしなめるように言われ、再び流れ出した夜の街の景色を眺めながら少々物思いに耽る。

 最初から……もっと言えば依都さんに会う前から、彼女との関係を一度きりにするつもりはなかった。花菱依都という女性には大事な役割があり、彼女と親しくなる必要があったからだ。

 しかし、今の俺は当初の目的など関係なく、もう一度会いたいと思っている。会ったばかりだというのに、とてつもなく心が惹かれて抗えない。三十一年間生きてきた中で、こんな感覚に陥ったことが今までにあっただろうか。

 予想外の展開に軽く動揺しつつ、今日依都さんのもとへ向かうきっかけとなった出来事を思い返す。

 それは約二週間前、すでに紅葉が散り始めている田舎町でのたわいない話から始まった。


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