ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 居心地のいい家に家族がそろうと、タイムスリップしたかのごとく懐かしく温かい気持ちになる。今夜も豪勢な海鮮料理に加え、母の手料理が用意されたリビングダイニングに集まり、わが家の日本酒で乾杯をした。

 おしゃべり好きな二十七歳の妹がおもに近況を話し、俺は基本聞き役に徹する。そのうち仕事の話題になり、父が神妙な顔で俺に話しかけてくる。

「前に相談してた新種の酒についてだが、酒米農家との折り合いがつかなくてな。花菱さんにぜひ頼みたいんだが、なかなか首を縦に振ってくれないんだよ」

 それを聞き、酒も入って気が緩みまくった頭を仕事脳に戻す。

 以前から、父が貴重な品種の酒米を使用した新しい酒を造りたいと言っていて、もちろん俺も協力するつもりでいる。

 本社では担い手のいない田んぼを買い取って自社栽培もしているのだが、今回使いたい米は新たな品種。栽培するにはそれなりの知識と技術を持った人物の協力が必要だ。

 それだけでなく、その米に適した土地と水も重要になる。花菱さんのところは米の出来もよく毎年安定しているため最適なのだが、彼にとっては負担が大きいのだろう。

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