ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
 祖父の気持ちがひしひしと伝わってきて、胸が痛くなった。

 以前の私だったら意地になって突っぱねていただろうが、御鏡さんと話したおかげで心が揺らぐ。病気ならなおさら、元気なうちに会ったほうがいいのではないかと。

 とはいえ、すぐに答えは出せず、やや話をはぐらかしてしまう。

「今ちょうど、ある人とお母さんの話をしていたところよ。すごいタイミングね」
《もしかして、御鏡の社長さんか?》

 ピンポイントで彼の名前が出てきたので、私は驚いて目をしばたたかせる。

「なんでわかるの?」
《ああ、この間社長さんが仕事の件で家に来た時、依都の話になってな。俺が悩んでいるのを知って、お前と眞由の仲を修復させるために協力したいと言ってくれたんだよ》

 感謝しているような調子で話す祖父だけれど、私にとっては聞き捨てならない話。まさか、さっき御鏡さんが母のことで説得してきたのは、実は祖父のため? なんでそんなことを……。

 わずかな疑心が芽生え、胸がざわめき始める。

「仕事で関わっているだけの彼が、どうしてそこまでするの? もしかして、なにか別の思惑でもあるんじゃ……」
《えぇ? いやいや、思惑なんてそんな》
「ちゃんと教えて。どうして協力するって話になったのか」

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