ドSな御曹司は今夜も新妻だけを愛したい~子づくりは溺愛のあとで~
「まず君の家へ行って、その後しいじへ向かった。でも店に入る前に、ヒモトで親友が働いていると言っていたからなにか知っているかもしれないと思って。寄ってみたら、店主のおじさんが『ふたりで立ち飲み屋に行ったよ』と教えてくれた」

 そういう経緯だったのか。たぶん、私が行きそうな場所を手当たり次第回ろうとしていたのだろう。その気持ちが嬉しい。

「……そんなに捜してくれたんですね」
「君を繋ぎ止めておきたかったから」

 繋いだ手に少し力を込められ、ドキリとしながら彼の話に耳を傾ける。

「最初は、花菱さんとの約束のために依都と距離を縮めようと思っていた。君の母親の病気についても聞いていたし、それで花菱さんが気落ちしていると俺たちの仕事にも関わってくるからな」

「祖父がそんなに私と母の問題を気に病んでいたとは……。それを交換条件にしちゃうのもびっくりですけど」

「すまない。使えるものは使うタチでね」

 謝ってはいるものの、臆面もなく言うので呆れて笑ってしまった。でもきっと、祖父や私たちのためを思ってのことでもあったのだろう。

 今度はちゃんと納得して聞いていると、クールな御鏡さんの目が柔らかく細められる。

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