【電子書籍化】婚約者と親友に裏切られて殺された聖女はアンデッドとして蘇ります!〜冥王様と共に絶望をお届けする予定ですけど……覚悟はいいですか?〜
ヴィヴィアンはサミュエルの行動に驚いていた。
彼が自分からヴィヴィアンに触れてくれたこともそうだが、跪いてまるで大切なものを扱うように手を取っているではないか。

(ここに来たばかりの時もそうだった。サミュエル様は泣き噦るわたしの話を最後まで聞いてくれたし、今もまだよくわからないけど側にいるととても落ち着く)

それはジェラールとはまた違った感覚だった。
追いかけても掴めない、頑張って周囲に認められることで彼の気を引きたいと思っていた。
ヴィヴィアンはいつも焦っていたし、寂しさを感じていたような気がする。
しかしサミュエルはヴィヴィアンを包み込むように受け止めてくれる。
感じるのは安心感と温かさ。

ヴィヴィアンがそう考えていた時だった。
赤と金色の瞳がスッと細まったかと思うと、黒い髪がサラリと流れる。
サミュエルが立ち上がり、ヴィヴィアンの頬に触れた。


「何か困ったことがあれば屋敷に来ればいい。ヴィヴィアン」

「え……?」

「なにか……この森にとっていい変化が起こっているような気がする。動物たちがヴィヴィアンに縋るのも何か理由があるのだろう。感謝している」

「……!」

「ありがとう」
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