【電子書籍化】婚約者と親友に裏切られて殺された聖女はアンデッドとして蘇ります!〜冥王様と共に絶望をお届けする予定ですけど……覚悟はいいですか?〜
王太子の婚約者になり、民のために尽くす。
そうすれば二人への恩返しになると思っていた。
実際、ラームシルド公爵家には様々な恩恵があり、二人はヴィヴィアンを育てたことに民達からも感謝されている。
それがヴィヴィアンの大きなモチベーションとなっていた。

『ヴィヴィアン、無理をしてはいけないよ』
『自分を犠牲にし過ぎてはダメだ。たまには息抜きしろよ』

もう大好きな二人に会うことはできないのだろう。
そのことがヴィヴィアンの唯一の心残りだった。
ジェラールとベルナデットはスタンレー公爵を使い、ラームシルド公爵に毒を盛り、マイロンを追い詰めると言った。
その毒を治療することすら許されない。

(お父様とマイロンお兄様がどうか無事でありますように)

どれだけ祈っても不安は拭えない。
アンデッドを治療していたけれど、心は満たされるどころか軋んでいく。
今まで前を向いてきたけれど、ふとした瞬間に不安が襲う。

(わたしはこれから、どうすればいいの?)

涙が溢れそうになって、ヴィヴィアンは急いで三人に背を向ける。
誤魔化すように足元に転がっている瓦礫を拾い上げる。


「今から頑張って直さないと!それまで野宿ですかね」


孤児院で育ったヴィヴィアンにとっては野宿でも問題ないではないではないか。
あの場所より最悪なところなどありはしない。
そう言い聞かせて、周りにバレないように涙を拭った。

(大丈夫……ずっと一人だったじゃない。元に戻るだけよ)
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