墜愛
沼る
陽が傾いて、
カーテンの隙間から、橙色の光が細く差し込む、
1Kの部屋の中。
幼なじみの彼、綾人と向き合って、
部屋の真ん中に立つ私。
いつもと同じシチュエーションのはずなのに、
また今日も心臓は脈打ち、
目の前の彼を、体が欲しがっている。
黙って立ったまま、目の前に立つ彼の手に、
そっと手を伸ばし、
指先をキュッと、握る。
フッと鼻で笑う綾人。
「麗蘭ってそんなに、俺じゃないとダメなの?」
掠れる程に、
囁くような声で、
彼は私に尋ねてきた。
嘲笑とも取れる笑い方をされても、気にしない。
私の気持ちなんて
きっと
とっくに知られている。
隠しても無駄なんだ。
「うん。…綾人じゃないと、ダメ。」
「俺が、他の女と遊んでても?」
「そんなの、今更聞くこと?…早く…しようよ。」
「…相変わらず、欲しがりだな。麗蘭は。」
そう言って、彼は右手を私の左耳の方へ伸ばすと、
垂れていた髪を耳にかけてきた。
彼の指が私の耳を掠めただけで、
体がビクッと反応する。
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