墜愛
「麗蘭ちゃん。」
後ろから声を掛けられ、振り向いた。
そこには、4年の高坂先輩が立っていた。
「よかったら、あっちで花火しない?…2人きりで。」
正直、驚いた。
高坂先輩は、
真面目で、まさに好青年代表といった、
人気のある先輩だ。
もう内定も出ていて、
来年からは大手証券会社で働くことも決まっていると、聞いたことがある。
そんな先輩からのお誘い。
私に好意が、あるのだろうか。
「麗蘭!行っておいでよ。私のことは気にしなくていいから。」
状況を察した様子の歩美にヒソヒソ声でそう言われ、
私は「ありがと」といって、高坂先輩と一緒に花火をしに行った。
「ごめんね、急に話しかけて。」
何本か持ってきた花火を私に預け、
小さな蠟燭に火を点けながら、
高坂先輩が私に言った。
「いえ。ちょっとびっくりしましたけど…嬉しかったので、大丈夫です。」
素直にそう言うと、
高坂先輩は嬉しそうに笑いながら
「それなら、よかった」と言った。
火が灯った蠟燭を上手に砂に挿すと、
先輩が立ち上がる。