墜愛
墜愛
それからしばらく経ったある日。
突然、綾人から、部屋に来るように誘われた。
引っ越しの手伝いをして以来、初めての訪問。
「なんでまた、仕送りの箱を一緒にするかなー、ウチの親…。取りに行くのが面倒くさいよー。」
綾人のバイクで一緒に彼の住むアパートまで来て、
2階に続く階段を昇りながら、
私はブツブツ文句を言う。
「送料の節約になるからだろ。俺の親から、結構いいレトルトの商品、送ってもらったから、少し分けてやるよ。ホテルが監修してるやつとかあったし。」
「それ、全部もらって帰る。」
「やめろ。俺だって食べてみたいんだから。」
鍵を開けて綾人の部屋に入る。
部屋の中は、引っ越してきた時と違って、綾人と同じ香りがした。
綾人の部屋に来るだけでも意識してしまっていたのに、
彼と同じ香りがする部屋の中にいるだけで、
心臓のドキドキが早くなる。
リビングに続く扉を開けると、ソファの横に大きな段ボールが置いてあるのが見えた。
「おっき。」
「な。」