墜愛
さっきまで揶揄うような表情をしていた綾人の顔から、
笑いが消えた。
そのまま、綾人は
黙っている私の顔を覗き込みながら、
顔を近づけてきた。
まずい。この空気感は…。
経験のない私でも、
この後、どうなりそうなのか
容易に想像できた。
どうすればいいのか分からず、
覗き込んできた綾人の顔をとりあえず見つめ返してみる。
綾人からの、熱い視線。
挑戦的な目で、見つめ返してやろう、なんて思うのに、
野性的な彼の表情を前にして、対抗するなんて、
もはや負け戦だ。
上半身裸の綾人はソファに手をつき、
私が逃げられないように、囲んでいる。
無言でしばらく見つめ合うと…
そのまま、私たちは唇を重ね合わせた。
優しく、触れるだけのキスをしてきた綾人。
好きな人に、キスされている。
大事にとっておいた、私のファーストキス。
ついに、ずっと好きだった綾人に、捧げた。
それだけで私は満たされて、幸せな気持ちになった。
触れている彼の唇が、
とても柔らかくて、気持ち良くて、
頭がぼーっとしてきて、何も考えられない。
綾人からのキスが繰り返される最中、
鍛えられた逞しい体に優しく抱きしめられ、
私の気持ちは、ますます昂る。
私はそのまま、ソファに押し倒されて、
ファーストキス以上のものも、
その日のうちに、奪われてしまった。
綾人の体の厚みといい、
匂いといい、
身長差といい、
攻め方といい、
全てが程よく、心地よかった。
嬉しかった。
好きな人と結ばれるって、こんなにも幸せなんだ。
最中、私はずっと幸せを噛みしめていた。