墜愛


「行きたいです。よろしくお願いします。」


「やった。ありがと。公開日、来月初めだからまだ先だけど、公開日の週末にでも、観に行こうよ。」


「そうですね。」


「よかったら、映画の前か後、一緒にご飯食べない?近くに、美味しいパスタ屋さんあるんだ。」


「いいですね!パスタ好きなので──」


「へえ、どこのパスタ食べに行くの?」


突然後ろから声を掛けられた。


振り向くと、綾人と…歩美が並んで立っていた。


「綾人!歩美も。」


「あ、高坂先輩、お疲れ様です。」


そう言って綾人は先輩に頭を下げた。

歩美も頭を下げる。


高坂先輩はお疲れ、と言ってから

「あれ、歩美ちゃんと綾人くんって、付き合ってるの?」

とサラッと尋ねた。


「い、いえいえ!ちょっと勉強教えてもらおうと思って、さっき合流したばっかりで…」


歩美が真っ赤になりながら、慌ててそう言った。


「そうなんだ?」

高坂先輩は何かを察したのか、にっこり笑う。


そして、綾人に向かってこう言った。


「今度、麗蘭ちゃんと一緒に『墜愛』っていう映画を見てから、美味しいパスタを食べに行こうって言って、誘ってたんだ。…デート、するんだよ。」


よく分からないけど、

高坂先輩にしては珍しく、

挑戦的な目で綾人を見ている気がした。


綾人も

「へえ、それはお邪魔してすみませんでした。」

なんて言ってるけど、なんだか目が笑ってない。

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