墜愛


その日の夕方。


綾人から

『もう部屋にいるからいつでも来ていいよ』

というメッセージが届き、私は綾人の部屋に向かった。



玄関の呼び鈴を鳴らすと、

中から綾人が鍵を開けて、ドアを少し開けてくれた。


「お邪魔しまーす…。」


そう言って、玄関に立ち、ドアの鍵を閉めた途端、

後ろから、抱きしめられた。


綾人の吐息が首元にかかって、心臓が跳ね上がる。


そのまま、顔に手をかけて横を向かせられ、

後ろから覗き込むようにして顔を近づけてきた綾人と、

唇を重ねた。


何度か唇を重ねた後、靴を脱ぎ、部屋に上がると、

そのまま廊下の壁を背にして立たせられ、

()くような勢いで、深いキスをされた。


お互いの服を脱がし合いながらリビングに入り、

ベッドに近づくと、

下着姿のまま押し倒されて、

また、

私たちは体を重ねた。



結局、私たちは体だけの関係になってしまうのか、

という悲しみに暮れる心とは裏腹に、

体は、彼に触れられて喜んでいる。



その日も、何度も体を重ね合って、

そのひと時だけ、

彼から向けられる愛を味わった。



程よい厚みのある彼の体に腕を回して、思い切り抱きしめながら、

ふと、考えを巡らせた。

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