墜愛

激しい呼吸を繰り返しながら見つめ合い、

2人とも汗だくになっていることに気付いた時には、

もう陽は沈んでいて、

部屋の中は薄暗くなっていた。




「…シャワー、浴びるか。」



「…ん。」



「一緒に、入る?」



「いい。先に浴びて。」



「ありがと。じゃあ、行ってくる。…そのままじゃ、風邪引くぞ。」



そう言いながら彼は、横たわったままの私の体に、

そっと布団を掛けてくれた。




そんな彼を、

じっと、見つめていると、

優しく微笑んで顔を近づけ、

優しく触れるだけのキスを、してくれた。



そしてそのまま立ち上がると、風呂場のある廊下の方へ歩いて行き、

リビングと廊下を隔てるドアの向こう側に

姿を消した。




程なくして、シャワーを浴びる水音が聞こえてきた。




私は、近くにあった下着を拾い上げて身に付け、

ソファにかけていたロングカーディガンをサッと羽織ると、

キッチンへ向かい、

コンロにかけていた鍋を再加熱して温め始めた。




ご飯はずいぶん前に炊き上がっていた。




おたまで鍋底から掬い上げるようにしながら掻き混ぜる鍋の中にあるのは、ハヤシライスのルー。



綾人の大好物。



きっとこれを見たら、今日こそは、ゆっくり過ごして帰ってくれるはずだ。



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