墜愛


お店を出ると、最寄り駅へ向かって2人で並んで歩いた。


「今日はありがとうございました!ご飯まで奢っていただいて…すみません。」


「いいよ、俺が誘ったんだし。また一緒に来てくれたら嬉しい。」


そう言って、先輩がにっこり笑った。


そして。


軽く、先輩が私の手に触れてきた。


驚いて硬直していると、そのまま手を握られ、指を絡めてくる。


恋人繋ぎ。


「駅までこのままでもいい?」


そう言って、先輩が私の反応を伺ってる。


コク、と頷くと、

先輩はふっと微笑んで、そのまま私の手を引いて歩き出した。



先輩に握られている手を見つめながら、先輩の少し後ろについて歩く。



嫌、ではない。


嫌ではないんだけど、なんだか違和感を感じる。



それが何なのか分からないのがもどかしい。



いっそ嫌だと思えたら、

この手を振り払って、

先輩との関係もリセットできたかもしれないのに。


答えを出せない自分が、嫌になる。

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